今月の主題 血栓とその臨床
血栓好発状態
悪性腫瘍
漆崎 一朗
1
,
新津 洋司郎
1
1札幌医大癌研内科
pp.829-831
発行日 1979年6月10日
Published Date 1979/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215908
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はじめに
1865年Trousseau1)が悪性腫瘍患者のrecurrentmigratory thrombophlebitisについて初めて記載して以来,悪性腫瘍に血栓症がしばしば合併することは諸家の注目するところとなり,その原因として担癌生体における過凝固状態なる概念が明らかにされてきた.すなわち担癌生体では,血液組成がきわめて凝固しやすい特性を有していると考えられる.このような状態ではわずかなrisk factorが加わることにより,多発性血栓が形成されやすく,いわゆるDIC(disseminated intravascularcoagulation)がひき起こされる.また腫瘍細胞自身が血管内に侵入して形成する血栓症や,腫瘍の発育,遊離,着床,転移などの現象においても凝固線溶系のかかわりあいは強く,その正確な把握は悪性腫瘍の予後や治療の上で重要な問題である.
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