連載 技法=以前・8
「聴かない」ことの力
向谷地 生良
1,2
1浦河べてるの家
2北海道医療大学
pp.107-115
発行日 2008年5月15日
Published Date 2008/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100511
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1 哲学とケア
ケアの現場は、聴きすぎてきた
ケアの基本は、「聴くこと」である。それに異論をはさむ人はいないだろう。私自身が「聴く」ということの重要性に最初に触れたのは、学生時代に「援助方法論」という講義で、カウンセリングの祖といわれるカール・ロジャースの「クライエント中心療法」を学んだときだったような気がする。三十数年前だが、いまでも「傾聴愛」という言葉を教わったときの授業風景が目に浮かぶ。
その影響もあって、精神科病棟の専属ワーカーとして働くようになって最初に買った本がカール・ロジャース全集であった。「クライエントの力を信頼した徹底的傾聴によって、人は自分のもつ力を見出して成長し回復する」という援助者としての基本的な態度は、カール・ロジャースを知ることによって養われたと私は思っている。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.