保健婦活動—こころに残るこの1例
「聴く」ことの意味
林 公子
1
1香川県観音寺保健所
pp.808
発行日 1991年11月15日
Published Date 1991/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900467
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1.Ⅰさん,その出会いのプロローグ
7年前,初めて保健婦として今の職場に赴任してきた時,1枚の古いビジブルが目に止まった.昭和51年より,肺結核(rI2型)にて命令入所の単身者Iさんである.「身寄りのないかわいそうな人.一生涯入院生活を送るのだろうか」が,この時の私の印象だった.そのIさんが3年前,12年間の入院生活を終え,退院した.
山間僻地にある4畳一間の小さな家はトイレ,風呂がないうえ,水道まで家の外.とても人が住めるような環境ではなかった.食生活も貧相で,みつばのカレー,みつばのみそ汁,ごはんに塩をかけて食べる時もあった.そのうえ長期入院,兄弟との絶縁からか,人を信じられなくなっていた.
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