連載 かれんと
ケアを「主役」に!
竹内 章郎
1
1岐阜大学地域科学部
pp.393
発行日 1997年6月10日
Published Date 1997/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900648
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世話,介護,看護等々,訳語に困る「ケア」だが,治癒を主たる内容とするキュアと比較すれば,およその意味はわかる.このケアがもつ意味は大きい.話題の公的介護保険制度も,その名のとおり,本来はケアに関する制度であるはずだ.また,病院付添婦の廃止が看護婦(士)業務に多大の影響を与えることや,高齢者への配慮が行き届いた地域では従来の医療スタッフにホームヘルパー等を加えて新たなチームを組織していることからも,ケアの重要性がわかる.
これまでの多くの医療がキュアを中心にしていたことは明らかだろう.看護婦(士)が医師の補助業務者でしかないのも,旧来の医療にあってはキュア的要素の大きい医師業務が医療の主役とされ,ケア的要素の大きい看護業務は脇役でしかなかったからだ.急性疾患への対応がその典型だが,キュア本来の任務は,労働市場に立てなくなった人を再び市場に送り出せるまでに回復させることである.極論すれば,これまでのキュア中心の医療は,市場に立てる人を前提にした市場を志向する医療であった,とさえ言える.
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