特別寄稿
こどもが主役の病院環境
藤井 あけみ
1
Akemi Hujii
1
1宮城県立こども病院 チャイルド・ライフ・スペシャリスト
pp.926-929
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100920
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◆病院におけるこども
「悪い子だったら病院に連れて行くよ」と母親が幼いこどもに言い放つ姿を目撃した時,“ちょっと待ってください,お母さん” と思う反面,“そう思われても仕方がない” と妙に納得している自分がいました.これが病院に対する社会の大方の見方なのだと思ったからです.
それではなぜ病院はいやな所として人々の間で思われているのでしょうか.おそらくその最大の理由は,痛いこと,こわいことがあるからではないでしょうか.もともと病院には,人が心身ともに一番弱くなっている時に行くので,元気な時だったら耐えられるであろう検査や処置も耐えがたいものと感じます.大人でしたらそれまでの経験や知識で多少なりともこの苦痛をカバーすることができますが,こどもはそういうわけにいきません.なぜ自分だけ痛いことをされなければならないのかわからず混乱しています.しかし,その気持ちを言葉で説明できません.それで泣きます.それが彼女(彼)にできる精一杯の方法だからです.でも大人はこの状況をよく理解できません.それでつい叱ってしまいます.人前でみっともないと感じますし,泣かせている自分に後ろめたさも感じるからです.するとこどもはますます絶望的な気持ちになります.一番理解してほしいお母さん(お父さん)がわかってくれないからです.さらにこどもは,親を困らせる自分に罪悪感を持つ場合もあります.このように一事が万事,どこをどうとってもこどもにとって病院は,つらくて耐えがたい場所なのです.
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