連載 医療コンフリクト・マネジメント 医療メディエーションの実践・6
ある死亡例での医療メディエーション
中西 淑美
1
1大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
pp.786-790
発行日 2007年9月10日
Published Date 2007/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101027
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医療メディエーション(対話による紛争解決)について,「その効果には限界がある」と揶揄されることがある。しかし,限界があることを否定的に述べるのは,医療メディエーションに対する表層的な理解による誤解である。筆者らは医療メディエーションですべて解決できるとは考えておらず,法的・医学的因果関係において,むしろ「限界がある」ことを前提としている1)。例えば信頼を裏切られ肉親を奪われたと感じている被害認知者にとっては,死者を蘇らせることが不可能なように,「完全なる納得」や「解決」はそもそも得られないのである。
医療メディエーションは,従来の二元論的な見方(和解か決裂か,法律判断か医学判断か,金銭賠償か否か)である結果主義に対して,当事者の視点からプロセス主義の考え方で紛争を見ていこうとするものである。日々の業務に追われて疲弊している臨床現場での紛争解決に向けた1つのアプローチとして,医療メディエーションを,当事者の対話の「場」で役立てることができると提示しているに過ぎない。
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