連載 医療コンフリクト・マネジメント 医療メディエーションの実践・1【新連載】
医療メディエーションとは何か
中西 淑美
1
1大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
pp.346-349
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100629
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連載をはじめるにあたって
医療の現場に限らず,私たちは日常,さまざまな意見や利害の対立に直面している。家族や友人との間でも,「なぜ,この気持ちをわかってくれないのだろう」「なぜ,こんなことで怒っているのだろう」と,考え込んでしまうことがしばしばある。こうした意見や利害や行為,感情,価値が対立し葛藤する状況をコンフリクト(対立・闘争・紛争・論争・葛藤・不一致・不調和)と呼ぶ。コンフリクトは,しばしば相手の意図や出来事への誤解(「ミスがあったに違いない!」)から生じるし,コミュニケーションがうまくいかないことで,次第に強化されたりする。コンフリクトは,こうして主観的に構成されるものといえるのである。
それゆえ,コンフリクトは,相手方との間だけではなく,自分自身のなかにも生じ得る。トラブルの渦中では,自分自身の内面で,「これでいいのだろうか」「理屈ではわかるが,感情的に受け入れられない」などと葛藤が生じるのはよくあることである。つまり,コンフリクト状況にあるときは,人は,相手方との間だけでなく,自分の内部にも葛藤を抱えているのである。そして,自分のなかにある葛藤と,外部の相手方とのトラブルは,相互に密接に結びついてもいる。だからこそ,コンフリクトに適切に対処していくことは難しいのであるが,また,同時にそこにこそ,コンフリクトをうまくマネジメントしていくための手がかりが隠されている。
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