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はじめに
近年,医療事故が報道で多く取り上げられ,医療現場では医療事故防止のためにさまざまな対策がとられている。
病院内で報告される事故は,「薬剤に関するもの」が多く1-4),投薬プロセスの段階で発生する看護師によるメディケーションエラーは全体の38%である4)。看護師は投薬プロセスの最終実行者としてその責任が大きいことがわかる。
このような状況において,いかにしてメディケーションエラーを把握(リスク特定),分析(リスク評価),予防,対応(リスク対処)するかが医療者としての課題となっている5)。
メディケーションエラーなどのインシデントを把握するものとして,日本ではインシデントレポート(オカレンス・アクシデントレポート,ヒヤリハット報告書等)が一般的である。
その一方で,メディケーションエラーの把握は,インシデントレポートでは難しいとされている。それは,報告されるメディケーションエラーの割合が,実際のメディケーションエラーよりも低くなるからであり,その要因として,(1)恐怖心,(2)エラーに対する認識レベル,(3)看護管理者の反応,(4)報告書記入に要する労力が報告されている6)。
また,管理者側の事故に対する捉え方,認識によって,スタッフナースの事故に対する意識が影響されることなどが報告されている7)。しかしながら,メディケーションエラーなどのインシデントおよびその報告に対する管理者とスタッフの意識の差に関して体系的な研究はなされていない。
本研究では,(1)メディケーションエラーやその報告に対する管理者とスタッフの意識の相違を検証し,(2)メディケーションエラーや医療事故などのインシデントの把握,予防,対策の今後のあり方を検討することを目的とした。
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