連載 組織マネジメントツール バランスト・スコアカードの基本のキ[4]
わが国の病院界のBSC
熊川 寿郎
1
1東京都老人医療センター免疫輸血科
pp.316-322
発行日 2004年4月10日
Published Date 2004/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100479
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バランスト・スコアカード(BSC)の導入方式
欧米の企業では,一般的に,経営トップが経営に関する新しいビジョンや戦略を決定し,それを組織全体に落とし込みます(トップ・ダウン方式)。一方,わが国の組織の経営トップは,組織全体のビジョンや戦略を示すことが不得手だと言われています。現代経営学の大家であるハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授は,かつて,日本の企業を「オペレーションはあるが,戦略がない」と評しました。今日の日本企業においても,ミドル・マネジメント層(中間管理職)が経営に関する新しい提案をトップに提示し,それをもとにトップがビジョンや戦略を決定するケースが多いと言われています(ミドル・アップ方式)。
BSCを導入する場合,欧米の一般企業は,外部コンサルタントなどの協力を得て,まず1,2の事業部をモデルケースとすることが多いと言われています。モデルケースにおけるBSC導入経験から,組織にBSCの構築・導入・運用の経験が蓄積され,それをもとにして全社的に展開することになります。前回紹介したDuke小児病院においても,まず小児科ICU部門にBSCが導入され,それが他部門に拡大し,その後,病院全体のBSCが新たに作成されています。つまりBSCはミドル・アップ方式で部門から全組織へと展開しています。
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