BOOK REVIEW
―看護師魂に触れる―看護現場学への招待―エキスパートナースは現場で育つ
佐藤 紀子
1
1東京女子医科大学看護学部
pp.629
発行日 2006年8月10日
Published Date 2006/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100335
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■教育の場から看護現場に飛び出した理由
著者の陣田さんとは何回かお会いしている。それは陣田さんが看護現場の看護部長になってからのことである。その陣田さんはかつて教員として仕事をしていた。学会や研究会の帰り道,よくおしゃべりをした。ときどき陣田さんは「教育の場」になじめなかったと話した。そのことの真意は,こういうことだったのかとこの著書を読んで納得できた。
筆者のように看護現場から離れていると,現場が非常に魅力的だと思う人と,そうでない人に二極分化するのかもしれない。現場には理論以上の,理論を越える豊かな,そして複雑な,そこで起こるすべてが唯一無二の出来事であるという現実がある。看護師はそのなかにどっぷりと浸かりながら,仕事をし,同時に人生を歩んでいく。それが,幸か不幸か教育の場を経験すると,看護現場の見え方がまるで異なることに気づくのだ。筆者が出会った人たちのなかに,教員になるとにわかに「現場はかくも倫理的ではない」と糾弾したり,「看護師ってひどいよね」とまるで自分がそこにいたときは倫理的で気配りができ,コミュニケーション能力に長け,エキスパートであったかのような発言をする人もいる。陣田さんが忸怩たる思いを抱き,教育の場から現場へと飛び出したことも頷ける。
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