書評
―『看護現場学への招待 エキスパートナースは現場で育つ』(陣田泰子著)―「現場」が紡ぎ出す看護へのあふれる思い
井上 智子
1
1東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科
pp.651
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100334
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「圧倒的に強い立場にいる人間が,圧倒的な弱者を言葉や態度で殺すことができるということがよく理解できました.」言葉はさらに続く.「逆に,心のこもった励ましの言葉が生きる力や気力を与えてくれることも.」
これは本書の著者が,ALS患者やその夫との交流のなかで受け取った手紙の一節である.厳しすぎるほどの本音は,読む者の胸を打つ.ましてや看護師であるならば,自ら経験してきたいくつもの場面がよみがえり,もてあますほどの思いに翻弄されてしまう.それでも臨床看護の道を歩き続け,歩き抜いた人にこそ感じ取れる,人生の境地が用意されているという.その境地にたどり着いた人々は,くぐり抜けてきた幾多の修羅場や苛酷な状況などみじんも感じさせない穏やかな微笑みをたたえている.ちょうど著者である陣田泰子さんのように.
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