BOOK REVIEW
―暴力被害者を援助するとき,知っておかなければならないこと―暴力被害者と出会うあなたへ―DVと看護
福井 トシ子
1
1杏林大学医学部付属病院
pp.641
発行日 2006年8月10日
Published Date 2006/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100338
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
■現場でこそ行なわれなければならない被害者への取り組み
暴力を受けている患者さんを担当した経験をもつ看護者はどれくらいいるでしょうか? 著者は本書の中で,看護者の3人に1人はDV(ドメスティック・バイオレンス)の暴力体験被害者に遭遇しているが,臨床現場では暴力被害者への対応が十分ではないということを指摘しています。そして,臨床現場でこそ行なわれなければならない暴力被害者への対応について書いています。
本書を読み進めていくうちに,ある妊婦さんのことをパァーッと想い出しました。妊娠20週で破水して搬送されてきた妊婦さんです。妊娠週数は,生まれた赤ちゃんのインタクトサバイバル(後遺症のない生存)が難しい週数です。それでもできうる限りのことをしたいと,妊婦さんは妊娠の継続を望みました。そのためには安静が必要です。もちろん床上安静です。しかし,妊婦さんは安静にしようとしません。そのうえ,その理由を看護者に話そうとしないのです。「パートナーとはけんかをしているので,会いたくない。話したくない」と言います。パートナーは面会を求めて,連日来院します。看護者は妊婦の意向を伝え,面会をお断りするということが続き,とうとう看護者とパートナーの間でトラブルになってしまいました。このトラブルで看護者は,パートナーが面会に来るのを恐れるようになり,妊婦さんに対して憎しみの感情をもつようにさえなりました。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.