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訪問看護の現状
現在,訪問看護師は将来を明るく見ることが難しい。十分回復したと実感のないまま退院する患者,治療ができず自宅に帰る患者,自宅で療養するには家族の負担が大きすぎる患者等々,訪問看護が必要な患者さんが多くいるのはわかっているが,スタッフはそう簡単に増やすことはできない。診療報酬・介護報酬の改定では種々の加算がつくようになったが,訪問看護料そのものの設定は大きく変わらず,数をこなすことで収益を上げるしかない。大きな病院の新卒看護師より少ないベテラン訪問看護師の給与。24時間の対応は当然,自宅での看取りや人工呼吸療法の患者のケアも常にある。
これだけ論うと,訪問看護の将来は「負担増」しかないように思えてしまう。しかし,訪問看護が始まった当初を考えると,制度の状況の違いはあるが,仕事自体にはそう大きな違いはない。重症な患者さんが退院することに対しては,「こんな状態でも家に居られるようにできるんだ!」,少ない訪問看護師でやりくりしていることについては「私たち看護師だけでもこれだけできるんだ!」と思い,訪問数を増やしていることに対しては「私は訪問看護事業所の稼ぎ手なんだ!」とちょっと疲れながらもがんばり,保健師から「あなたたちはいいわね,訪問1件行けばお金になるんだから。私たち行ってもタダよ」と言われて,「定時勤務だけでお給料貰えるんじゃない。私たち訪問しないとお給料ないのよ!」と労働者を自覚し,経験のない医療処置があると「業者よんで情報収集,勉強してから訪問看護!」と思い,「何か特色のあるステーションになれるといいな」と先に光を見出していた。未来があったし,期待もあった。山を越えることに,仕事のやりがいを感じつつ,ちょっと違う看護師,訪問看護師を自覚するようになった。
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