特集 触れる
皮膚感覚とケア
触れられるように触れる 触れるように触れられる―Abuseのない介助をめざして
熊谷 晋一郎
,
綾屋 紗月
Shinichiro Kumagaya
,
Satsuki Ayaya
pp.936-942
発行日 2008年11月1日
Published Date 2008/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101343
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
介助をめぐる駆け引き
不特定多数の介助者に対して常に無防備な身体をさらけ出し,彼らに「触れられる」ことなしには生活が立ちゆかない身体障害者は,この絶対的な非対称性のなかでどのように自らの心理的・身体的な安全を保っているのか.そこには,わずかな接触から,相手の意図を瞬時に読もうというピリピリとした構えと同時に,自らにとって快適な介助を実現するために,誘い,導き,支配するような積極性がある.
このように,介助という相互行為のなかには,善意や技術には回収できない,怯え,誘い,防御,攻撃の要素がある.被介助者が介助関係において虐待されることを警戒する一方で,介助者側も,介助場面において支配され,酷使されていると感じることもある.あるいは双方がやり場のない不満や不安に陥っている場合もあるだろう.これら,介助に内在する非対称性ゆえのポリティクス(政治的駆け引き)を,当事者たちは日々突きつけられている.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.