特集 量的研究,質的研究の「危うさ」と混合研究法の可能性—第6回日本混合研究法学会オープンフォーラム「混合研究法で量的研究,質的研究の『危うさ』を乗り越えられるか」より
オープンフォーラム 混合研究法で量的研究,質的研究の「危うさ」を乗り越えられるか
【量的研究の立場から】
計量的言語研究の現状と展望—検証型研究と探索型研究の界面
石川 慎一郎
1,2,3
,
抱井 尚子
4
1神戸大学大学教育推進機構
2神戸大学大学院国際文化学研究科
3神戸大学数理・データサイエンスセンター
4青山学院大学国際政治経済学部
pp.10-17
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201838
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抱井尚子(進行) 本日は,「混合研究法で質的・量的研究の『危うさ』を乗り越えられるか」というテーマのもと,量的研究からは言語学がご専門の石川慎一郎先生(神戸大学),質的研究からは看護学のグレッグ美鈴先生(神戸市看護大学)にそれぞれの立場からご登壇いただき,その後,混合研究法からは心理学の成田慶一先生(京都大学)にも加わっていただき,議論を深めていきたいと思います。まずは,本フォーラムの背景を説明いたします。
40年ほど前,質的研究と量的研究の間でパラダイム論争というものが起きました。研究者が質と量の陣営に分かれ,お互いの弱点を論文で攻撃し合っていました。こうした状況に不毛感を覚えた研究者が集ってできたのが混合研究法のコミュニティです。現在はかつてのような論争はみられず,むしろ質と量それぞれのパラダイムを超えて統合をめざそうとする動きもみられます。ですがいまなお,特に査読等の場面をはじめとして,質と量の違いが顕在化するような状況は色濃く残っているようにも思われます。いま改めて,質と量それぞれのパラダイムと立ち位置を確認し,その上で混合研究法がどのような役割と可能性をもつのかを考えることは,建設的な議論になるのではないかと思っています。
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