特集 ケアの意味を見つめる事例研究─現場発看護学の構築に向けて
6.事例研究において考えるべき倫理的配慮
山花 令子
1
,
齋藤 凡
2
1東京医療保健大学千葉看護学部
2東京大学医学部附属病院看護部
pp.447-455
発行日 2018年8月15日
Published Date 2018/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201545
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はじめに
研究を始めようと思ったときにまず考えなければならないことは,倫理的な配慮である。研究は臨床診療と異なり,患者に大きな利益を与えることは多くない。だからこそ,研究参加が自由意思で行なわれていること,研究参加によって危害がないことを検討する必要がある。
事例研究では身体侵襲はないが,看護実践の意味や意図を詳細に考えるためには実践事例の経過を詳細に提示しなければならず,関係者のプライバシーを侵害する危険性がある。また,学会発表,論文投稿時には,倫理審査委員会の審査を受けていることが投稿の要件とされていることも多く,「倫理審査の申請書の記載方法がわからない」「倫理審査を受けようとしたら,『事例研究では倫理審査は要らない』と言われた」「施設に倫理審査委員会がない」などの“倫理審査の壁”(小長谷ら,2016)があるという話を耳にすることがある。
本章では,「ケアの意味を見つめる事例研究」(以下,本事例研究)に取り組むために,主に下記の2側面を確認したい。
1.守るべき倫理的配慮は何か(研究参加への同意,プライバシーの保護)
2.倫理審査をどう考えるか(倫理審査が必須か,申請書の書き方,審査委員会がない場合の対応)
また,倫理指針や実際の倫理審査委員会とのやりとりの経験から,具体的な倫理的配慮の実施方法について考える。なお,ここでは私たちが現時点で「あるべき」と考える,事例研究の倫理的配慮について論じている。個別の倫理審査委員会や医療機関,大学等の事情により倫理審査の実際は多様であり,判断に窮する場合もあるのが実情である。事例研究の倫理的配慮については,今後も検討を重ねる必要がある。
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