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1.看護研究における匿名
人を対象とする看護分野の研究において、研究対象者の個人情報の保護に関する「倫理的配慮」が研究論文の中に記述されることは最近ではごく一般的となった。研究論文の中で、研究対象者個人が特定できないような「倫理的配慮」は言うに及ばず、固有名詞の使用自体を倫理的配慮に欠く論文として取り扱う査読手引きをもつ学術誌もある。もちろん、無節操に特定の個人や組織が識別できるような書き方は厳に慎まなければならない。しかしながら、なんでもかんでも匿名にすることが果たして倫理的配慮なのかということについては議論が必要と考える。本稿では、看護研究における「匿名」にかかわるいくつかのケースを挙げ、研究参加者の権利尊重の観点から、匿名が本当に倫理的配慮なのかどうかについて検討する。
匿名とは「実名をかくして知らせないこと(広辞苑第六版)」であるが、看護分野の研究において、匿名が取りざたされる場面には主として次のようなものがある。1)研究計画書(例:研究参加者の個人情報の保護について文書および口頭で説明し承諾を得る)、2)研究参加者を募集したり、研究参加者に研究方法などを説明したりする場合(例:「データは統計的に処理され個人が特定されることはありません」)、3)論文内で倫理的配慮を記述する場合(例:「研究対象者のプライバシーの保護に努めた」、4)査読ガイドライン(例:提出された論文内に固有名詞を使用していないか)などである。これらの文言ひとつひとつは至極ごもっとものように思えるものばかりであるが、ともすれば、匿名=固有名詞の排除=個人情報の保護=プライバシーの保護=倫理的配慮のように考えられているのではないかという懸念がある。
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