特集 事例研究をどううみだすか─事例がもたらす知の可能性
関連領域から
事例研究の可能性を探る
水野 節夫
1
1法政大学社会学部社会学科
キーワード:
事例研究論
,
探求の論理
,
理論的一般化
,
理論構築
,
往還的三角測量
Keyword:
事例研究論
,
探求の論理
,
理論的一般化
,
理論構築
,
往還的三角測量
pp.447-454
発行日 2017年8月15日
Published Date 2017/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201416
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はじめに
筆者自身の方法的立場は“事例媒介的アプローチ(Case-Mediated Approach)”というものであり(水野,2016),そうした立場から“事例研究”をめぐる諸問題に関しては非常に強い興味・関心をもっている。ここでは,そうした興味・関心に導かれる形で質的調査研究という分野に広い網をかけ,事例研究にかかわる方法論的諸問題について論じている文献(それをここでは“事例研究論”と呼ぶことにする)を渉猟し,そうした文献レビューの検討結果を踏まえて,“脈のありそうな議論”を展開していると思われるものを参考にしながら,事例研究がどういった可能性をもっているのか,という点に迫っていくことにしたい。
ここでの話の進め方は次のとおりである。まず,“事例研究の可能性を探っていく”という本稿での狙いを視野に入れるとき,事例研究論絡みで最低限押さえておくべきと筆者が考えている注目点を,“事例ということの意味”“事例研究の2類型”“事例研究の主要な諸特徴”の3点に絞り込む形で提示する。次に,そうした事例研究についての基本的理解を前提にした上で,“事例研究の可能性”とかかわりのある項目を大きく6点ほど挙げるとともに,それらのポイントとの関連で文献レビューの検討結果の一端の紹介を試みる。そして最後に,事例研究の可能性を実質化していく上で留意すべき点を3つほど挙げる形で,“自然体”で事例研究を進めていくことの大切さに触れることにしたい。
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