特集 看護学における事例研究法─新たな研究デザインへの可能性
これからの事例研究法の意義と可能性―事例研究会の取り組みを通じて
野並 葉子
1
1兵庫県立大学大学院看護学研究科
キーワード:
事例研究法
,
事例研究会
,
パラダイムケース
,
実践共同体
Keyword:
事例研究法
,
事例研究会
,
パラダイムケース
,
実践共同体
pp.198-203
発行日 2013年4月15日
Published Date 2013/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100767
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はじめに
私に与えられた課題は,事例研究法の意義と可能性ということで,「事例検討とは何か」でも「事例研究とは何か」でもないということから議論を始めたい。
私は,1997年より兵庫県立看護大学(現兵庫県立大学)大学院看護学研究科修士課程専門看護師コースにおいて,慢性看護分野の専門看護師の教育を担当し,2012年末で32人の修了生を輩出してきた。専門看護師コースの修士論文では,事例研究のデザインをとることが多く,その中でも看護実践の知識の開発に焦点を当てることが多い。ここで取り組んでいるのは,前向き研究(prospective)デザインということになる。
さらに,2006年より年4回の慢性病看護事例研究会を兵庫県立大学明石キャンパスで開始し,8年間で通算32事例の検討を行なってきた。ここでは,臨床で活躍する専門看護師や認定看護師,看護師が参加している。実践へのコンサルテーションという意味合いが強く,それを受けてさらに実践を積み重ね,事例研究へと発展していくことを私は願ってきた。またこの検討会の意義は,実践共同体をつくっていくことができる点にあり,じわっと滲み出るように広がっていく効果が期待できる。
看護における事例研究は,中村(1992)が臨床の知としてモデル化した〈固有世界〉〈事物の多義性〉〈身体性をそなえた行為〉をあわせて体現しているものを掘り起こしていくことではないだろうか。
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