特集 看護学の発展にとっての理論構築─Transitions Theoryからの展望
看護理論とその展開─Transitions Theoryからの考察
坂下 玲子
1
1兵庫県立大学看護学部
キーワード:
看護理論
,
トランジション理論
,
状況特定理論
,
概念
,
理論構築
Keyword:
看護理論
,
トランジション理論
,
状況特定理論
,
概念
,
理論構築
pp.96-103
発行日 2016年4月15日
Published Date 2016/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201233
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看護理論とは何か
看護学は何を研究対象としているのか。一言でいうと,「看護現象」ということになる。それは,人々の健康問題の改善や健康増進を支援する看護ケアにおいて,知覚することのできる事柄や出来事の総体である。臓器ごとの働きや病態,生理反応だけを取り出してみたところで,有効な看護を組み立てることはできない。
看護現象の中心は,看護の対象者と看護職者との人間的反応が生み出す相互作用のプロセスであり,それは,それを取り巻く人々や生活環境によって彩られていく。例えば口腔ケアについて,これを「対象者の口腔内を医療者が清潔にする手技」と捉えたならば,理論は不要であろう。しかし看護職が行なう口腔ケアは,どのような健康問題をもつ対象者なのか,どのような背景をもつ対象者なのかによって,そのゴールやアプローチは異なってくる。例えば,認知症高齢者の口腔ケアを行なう場合には,看護職はその人の過去を踏まえて人と成りを知り,病態を含めてその人の「いま」の状態をアセスメントした上で,居心地のよい環境をつくり出し,その人の思いを尊重しながら,残存機能やセルフケア能力を引き出す働きかけを根気よく行なう。それはQOLを高め,生きる意欲を引き出す全体的なケアへとつながり,対象者に大きな変化をもたらす。そのような多面的で複雑な関係性を含む看護現象を説明し,予測し,そして適切な介入を組み立て,よりよい成果を得るためには看護理論が必要となる。
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