連載 日本の乳信仰 総論 おっぱい神社・おっぱい寺・乳銀杏・乳地蔵・乳神様を記録する・3
乳信仰祈願から見た授乳の風習
奥 起久子
1,2
,
野口 智子
1,3
,
地本 淳子
1,4
,
内岡 恵
1,5
,
瀬川 雅史
1,6
1おっぱい神社等を記録するワーキンググループ
2東京北医療センター小児科
3のぐち母乳育児相談室
4札幌医科大学付属病院 産科周産期科
5うち助産院まんまるーむ
6のえる小児科
pp.346-349
発行日 2022年6月25日
Published Date 2022/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665202024
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イチョウへの乳の祈願
イチョウのチチを煎じて飲む
イチョウは乳祈願の対象として突出して多く,それを指摘する論説として児島の総説もある1)。多い理由として,乳房を連想させるチチという突起物にあることは前述した(連載第1回)。極めて少数の例外を除いて,祈願対象のイチョウにはチチがある図1。このチチの一部や樹皮を削って煎じて飲むことが分泌に効果的とされていたため,かつてはチチの切り取りや樹皮の採取が盛んに行われた。切り取りは個人的に行われただけではないようだ。愛媛県内子町(旧・小田町)の三島神社では祈願にきた人にイチョウの樹皮を授与していた2),神奈川県川崎市の影向寺では戦前は多くの要望に応じるため木に梯子をかけて樹皮を採取していた3),愛知県一宮市鞆江神社には現在でも時折樹皮がほしいという要望がある4)という話が資料に散見される。
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