連載 日本の乳信仰をめぐる旅・3
おっぱい神社・おっぱい寺・乳銀杏・乳地蔵・乳神様たち
奥 起久子
1
,
野口 智子
1
,
地本 淳子
1
,
内岡 恵
1
,
瀬川 雅史
1
1おっぱい神社等を記録するワーキンググループ
pp.156-157
発行日 2021年3月25日
Published Date 2021/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201741
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萩野稲荷神社の乳もらい地蔵 北海道北斗市萩野30-27
萩野稲荷神社は久根別川河畔にある鎮守社で,地蔵堂の地蔵は「乳もらい地蔵」と呼ばれ,お供えした米でご飯を炊くと母乳に恵まれ,丈夫な子が育つと伝えられている。現在,町内会婦人部の方々がお地蔵さんに着物を着せ,鼻筋に白粉を塗り,口に紅をさし,花を供えてお世話をしているとのこと。昔から女性たちは,安産と出産後にお乳がよく出ることを願ってきたが,それを今も大切にする気持ちが伝わる。
神社の創立は明治初頭の北海道開拓時代のようである。以前は境内に地蔵堂と百万遍の塔が並んでいたが,道路拡張工事のため現在は少し離れた場所にある。百万遍のルーツは大数珠を百回繰り回す仏教行事で,家内安全,豊作,安産などを願うもの。境内にはほかに「かねのわらじ」がある。当時流行する疫病を退散させるためのシンボルとして,金属製の大きなわらじが信仰されたという。明治中頃から境内で開かれていた武部塾は,その後,分校を経て萩野小学校になったそうで,この地域の生活の発展に沿った移り変わりがあったことが分かる。
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