連載 日本の乳信仰をめぐる旅・5
おっぱい神社・おっぱい寺・乳銀杏・乳地蔵・乳神様たち
奥 起久子
1
,
野口 智子
1
,
地本 淳子
1
,
内岡 恵
1
,
瀬川 雅史
1
1おっぱい神社等を記録するワーキンググループ
pp.318-319
発行日 2021年5月25日
Published Date 2021/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201783
- 有料閲覧
- 文献概要
源常林の銀杏
青森県青森市浪岡大字北中野字沢田107
樹高19m,目通り幹周*1 6.7m,推定樹齢500年以上で,市指定天然記念物。りんご畑の中の道路の脇に立つ。チチ*2が多数下がっており,乳の出に霊験があるとされる。イチョウの傍らに小さな祠があり「源常林姥神社」と記されている。
ここは,14世紀に「源常館」という平山城があった場所と言われる。その後,津軽十三の福島城主・藤原秀栄の子が,病死した乳母のお墓の目印に挿したイチョウが育ったという伝承があるほか,乳母と一緒に都からこの地に来た福姫という女性が,亡くなった乳母(姥)の墓に目印のためイチョウを植えたという伝承もある。一方,江戸時代の紀行家・菅江真澄が寛政3(1791)年に書いた紀行文「すみかの山」には,「絃上宇兵衛の塚に植えた大銀杏の木」とあるそうだ。津軽の民謡「津軽山唄」には,「浪岡,浪岡の,源如林の銀杏,銀杏の木は……」と歌われているが,この唄は浪岡城を落とした大浦氏の家臣の一人が堀越城での祝宴の席で草刈唄として歌ったのが元と言われ,古くからよく知られていたイチョウであった。
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.