連載 保健師のための行政学入門・2
なぜ保健師の仕事には裁量権があるのか?
吉岡 京子
1
1東京医科大学医学部看護学科地域看護学
pp.158-162
発行日 2015年2月10日
Published Date 2015/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664200107
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看護師と保健師の仕事の違いは何だろうか
裁量権という切り口
「現場が好き」とか「住民さんと直に接していたい」という気持ちをもっている保健師は,少なくないのではないだろうか(大先輩の方には,「それこそが保健師の醍醐味よ」と言われそうである)。また,「管理職になると住民さんと会う機会が減るから」という理由で,昇進試験を受けない保健師もいると聞いたことがある。たしかに,行政の第一線機関である現場の保健センターや機関は保健師活動の本丸であり,そこに働く保健師は住民支援の中心的存在である。
1人ひとりの住民の健康問題を支援する,いわゆる「個別支援」において,現場の保健師はかなりの裁量権をもっている。そのことを意識している保健師はもしかしたら少ないかもしれない。私はかつて消化器科病棟で看護師として勤務していたが,病棟での業務は当然ながら「医師の指示のもとに行う」ことが基本である。すべての入院患者のカルテには医師のオーダーが書いてあり,何か困った事態が発生するとそのオーダーに則って判断する。カルテに書かれていない,オーダー以外の選択肢は,基本的に選べないのである。看護師のご不興を買ってしまいそうだが,私自身は病棟看護師として働いていたときの個人的な感想として,裁量権はさほど大きくなかったと記憶している。
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