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■要旨
本研究は保健師の虐待への介入するを妨げる要因,スクリーニングの実態,看護基礎教育や継続教育の内容や必要度を明らかにすることを目的とした。対象はA県下の市町村保健師358名で,自記式質問票への回答を依頼した。質問票はGlaisterらが作成した質問表を参考に独自の質問票を作成した。有効回答者223名(回答率62.3%)を解析対象とした。
その結果,大半の保健師は「被害者に何らかの援助ができる」という意識を持っていたが,「被害者は保健師と虐待について話しあいたいと思っていない」あるいは「わからない」と回答した者が40%以上もあった。
介入することを妨げる要因では,「援助機関や社会資源・法的なことについての知識不足」の割合が高かった。Glaisterらの調査では30%の者が「すべての来所者や患者にスクリーニングを行っていた」が,本調査では約5%で,特定の様式や手順を用いている者は少数であった。
看護基礎教育で虐待について学んだ者は,Glaisterらの調査では48%であったが,本調査対象者では23.3%と少なかった。また,そのほとんどは保健師としての経験年数が10年未満の者で,講義内容は簡単で系統だったプログラムではなかった。継続教育については50%以上の者が受講していたが内容は不十分なものであった。
また,十分な対応ができていない項目とさらなる知識や研修が必要な項目をそれぞれ20項目挙げて回答を求めたところ,すべての項目においてGlaisterらの調査よりも高率であり,本調査対象保健師は虐待に対する対応への準備度が不十分であることが示唆された。
適切な虐待への介入に向けた教育プログラムの構築が望まれる。
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