特集 児童虐待—危うい子育て環境そのサポート
保健所の電話相談から介入した児童虐待
徳永 雅子
1
1世田谷区世田谷保健所
pp.767-774
発行日 1993年10月10日
Published Date 1993/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900761
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はじめに
保健婦の仕事の1つに,電話による相談サービスがある。気軽に匿名でもかけられるので,電話相談の需要は年々伸びており,保健所には住民からさまざまな問い合わせや相談が入ってくる(図1)。この事例は,虐待している実母から「子どもが夜泣きでぐずると,発作的に口を塞いでしまう」という電話相談があり,危機への介入を行ったものである。問題が発生したのは後述の「子どもの虐待防止センター」設立前で,虐待の問題に特定したネットワークが形成される以前だったので,対応はアルコール関連問題地域ケアの初期介入の方法にそって,クライエントの母親に介入していった。関わり方や対応はこれでいいのだろうかと保健婦自身が不安になり,試行錯誤しながらではあったが,事例から学んだことは多かった。
親子関係が緊張しているときの介入,母と子のセパレーションの仕方,相談を受ける保健婦の共感性や対応,そしてネットワークづくりの方法などである。母子の問題は,いわば保健指導サービスの出発点になっているので大切な位置づけにある。現代は子どもの数が減少し,核家族の中で育児が行われている。大都市においては,祖母や近隣の人々,友人などによる手助け,あるいは育児の伝承というものも少なくなっており,地域のなかで子どもを見守り育てるということもなくなってきた。
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