調査報告
住宅改修による要介護高齢者への影響―住宅改修後の意識調査から行政のかかわりを考える
松本 由美
1
1熊本県上益城郡甲佐町役場健康福祉課介護保険係
pp.1105-1109
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100593
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■要旨
より質の高い住宅改修のあり方を考えるために,要介護高齢者が,住宅改修後にどのような身体的・精神的変化があったと意識しているかを明らかにすることを目的とした。
対象は,K町に住み2002(平成14)年度に住宅改修をした要介護高齢者61名のうち目的を説明し,同意を得た61名とし,質問紙による面接調査を行った。
調査の同意が得られた61名(100%)の分析結果から,住宅改修後の要介護高齢者の身体的・精神的な影響について以下のことがわかった。
・要介護高齢者の日常生活能力や活動性が向上することを目的とした住宅改修によって,転倒がなくなることで安心感がもたらされ,さらにADLの自立度が向上していた。また,対象者のなかには関節疾患が多く,住宅改修によって痛みの軽減が図られていた。
・要介護高齢者が,ADLの自立度向上によって家族の直接的介護負担の軽減ができていた。また,要介護高齢者の年齢は高齢で,その介護者である家族も高齢であり,住宅改修は対象者以外にも役に立っていた。
・一方では,住宅改修が対象者のニーズに合わず,取りつけた手すりなどを使用していない傾向があった。
以上のことから,高齢者の特性や要介護高齢者の疾病の状態を配慮しながら,住民の生活や日常生活動作,残存能力やQOLなどを考慮し,対象者個人を多角的に分析し,さらに将来的な知見や金銭的な部分を含め,専門職と連携を取りながら住宅改修をすすめていく援助が必要と考えられる。そのためには,ケアマネジャーとともに事業所の工事担当者にも教育をしていく必要がある。
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