連載 老人虐待―米国からの報告・3
虐待の実態と主な原因
江原 勝幸
pp.818-821
発行日 1997年11月15日
Published Date 1997/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902435
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老人虐待の実態
全米でどのくらいのお年寄りがアメリカ全土で虐待の被害にあっているのでしょうか.全国規模での老人虐待の分野で発生率研究・調査はいまだに信頼できるものが非常に少ないというのが現状です.その主な理由として①報告されない隠れたケース,②虐待の全国共通定義の欠如,③APS(Adult Protective Services;老人虐待保護課)や警察などの情報収集システムの欠陥という構造的問題があげられます.その中でもNCEA(National Center on Elder Abuse;全国老人虚待センター)が発表している統計値は数少ない信頼できる最新の調査データとして多くの虐待問題の研究者に利用されています.
NCEAによると老人虐待の報告数は全米で,1986年117,000件,1990年211,000件,1994年241,000件と,着実に増えていることを指摘しています(図1).自己ネグレクトを除き,1994年に推定で約820,000人の老人がさまざまな種類の虐待にあったとしています.
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