特集 母子保健活動で「心の問題」を予防する
早期介入で児童虐待を予防する
本間 博彰
1
1宮城県中央児童相談所
pp.936-940
発行日 2000年11月10日
Published Date 2000/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902291
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児童虐待対策の推移
わが国の児童虐待対策は,もっぱら児童福祉法のもとで,子どもを不適切な親の養育から保護するという視点で進められてきた。児童虐待対策の第一線の責任機関である児童相談所が,いかに虐待する親から子どもを切り離し,保護するか,に多くの議論が向けられてきた。この間,親権に対して児童福祉法の有する権限の不備,あるいは児童相談所の専門性と責任に対する疑問などが声高に叫ばれ,その結果,新たに児童虐待防止法が制定され,わが国はいよいよ本腰を入れて児童虐待対策に当たることになったのである。
さて,児童虐待の取り組みが進むにつれ,その次の対策をどのように展開すべきかについても明らかになりつつある。本稿のテーマである母子保健活動に大きく関わる課題としては,虐待の開始年齢が発見年齢よりもずっと以前にあることが明らかになり,児童虐待は育児の大変さや育児をめぐる問題と密接な関係にあることがますます明白になってきたことである。例えば,乳幼児虐待の実態に関する調査研究をした大阪児童虐待研究会の報告(1993)によれば,調査対象児の虐待の開始年齢は0歳児が38.2%,1〜2歳が26.4%を占め,全体の64.6%が3歳までに始まっており,子育てと児童虐待が密接に関わっていることが明らかにされている。
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