特集1 「ひきこもり」ケースには,こう対応する! 保健師ができる支援について考える
―「ひきこもり」を理解しよう➁―「引きこもり」が生じる社会の背景とは
富田 富士也
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1子ども家庭教育フォーラム
pp.1146-1151
発行日 2005年12月1日
Published Date 2005/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100242
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「引きこもり」は「閉じこもり」とは違う
「引きこもり」は傷つきたくない,と他者とのコミュニケーションから身を引いて自己の内的世界に入り込む対人関係の苦悩です。だから“ロボット”のように人間関係を必要としなければ,その苦しみを認識することはありません。しかし,人には性衝動があります。生身のふれあいを求める心です。したがって,人は引きこもりの心理と必ず向き合わなければならないのです。
「引きこもり」は,すべての人の日常にあります。「引きこもり」をあまりにも特別にラベリングして心的障害のような援助対象につくってしまうことは,新たな差別を生み出すことになります。「引きこもり」の長期化が極度の精神的不安症状を引き起こし,「閉じこもる」ことはあっても,援助者として向きあうスタートラインはコミュニケーション不全としての理解が大切だと,20数年来の相談活動から私は思います。つまり,人とふれあいたいのにふれあえない悩みこそ「引きこもり」の本質的テーマなのです。重要なのは,そこを割り切ったスケールやガイドラインで決めつけないことです。「誰でも一度は心が引きこもったことがあるでしょう。そしてどうそこから抜け出していったのか」,そんな素朴な問いかけから関わりを始めてほしいのです。
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