特別論文
職業教育の理想と現実
菅 龍一
1
1工業高校定時制
pp.52-57
発行日 1970年9月25日
Published Date 1970/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906375
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1)労働を通しての成長
“現在行なわれている職業高校の教育はこれでよいのか?”という疑問を,最初に僕に投げかけたのは,僕がまだ全日制工業高校の教師をしていたときの卒業生たちだった。当時はじめての卒業生を送り出し,いわば教師としてのワンサイクルの経験を経たばかりの僕は,奇妙な虚脱感に陥っていた。“この3年間で僕は彼らに何をしてきたのだろうか?”“これからの教師としての僕の一生は,この3年間のくり返しで終わるのだろうか?”“生徒たちは卒業して新たな世界で成長してゆくのに,僕はとり残されるのではないか?”“一体,人間が人間を教育する根拠は何だろう?”こうした一見とりとめのない,しかし教師として生き抜くためには根源的な問いかけが,僕のなかに存在していたのだった。
こうした状態の僕に対して,京浜工業地帯の主として化学産業に就職した彼ら卒業生が投げかけてきたことばは鋭かった。
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