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昨年は多くの旧医科大学が他大学と合併統合し,新生大学医学部として出発することになった.統合に至る前は,当大学においても当初は統合の是非を巡って激論があったが,いわゆる遠山プランが出て締め付けが厳しくなり,統合を前提としてその中でメリットを模索せざるを得なくなった.確かに単科大学であるよりは,総合大学では他学部との人的交流も深まり,学際的な研究・教育も可能となる.当大学では統合の理念のひとつとして「生命科学」を打ち出し,そのための学際的な研究センターを設立した.しかしながら,統合後1年近く経った今,まだ統合の過渡期とはいえ何やらぎくしゃくしたものを感じている.統合のためのワーキンググループ討議の際にも感じたことだが,それぞれの大学はそれぞれ創立以来の伝統を持っており,一方が持つ常識は必ずしも他者にはあてはまらない.組織の改編や人員配置も,必ずしも整合性が取れているようには思えず,医学部事務職員のかなりの人員が本部に吸い上げられ,統合のもくろみのひとつとも思える人員削減もからまって残った者は過重労働を強いられている.
本年4月からは大学も法人化され国立大学法人となった.法人化による大学の自由裁量権の拡大が謳われているが,中期目標・中期計画を掲げ,その達成度の評価を受けねばならず,そのためデスクワーク量は飛躍的に増大し,会議・委員会も増えた.学長をはじめとする大学評議会・理事会の権限が強化され,これまでは医学部教授会を中心として医学部キャンパス内で自己完結していた人事や予算なども,全て本部の決済を待たねばならない.さらに法人化により労働基準法が適用されることになって事態は複雑化した.医師が労働者であるかどうかの議論は別として,素直に考えれば現在の病棟勤務の実態は労働基準法違反の疑いがある.労働基準法の説明を聞いて驚いたが,当直医・宿直医は連絡事務に徹して病棟・外来業務を行ってはならず,もし行った際には翌日は休暇を取らねばならぬという.今でさえ少ないマンパワーでやりくりしているのに,これをそのまま受け入れるのは到底不可能である.事務職員,技師,看護師には労働基準法による超過勤務手当が検討されているが,もともと大学医学部教員は,附属病院所属であっても教育職としての給与体系に組み込まれており,日常当然のように行われている診療業務による超過勤務は給与には反映されない.法と実態との摺り合わせに苦慮するところである.
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