特別寄稿
魂のケア―オランダで安楽死を選んだ日本女性の「日記」を手掛かりとして
藤腹 明子
1
1飯田女子短期大学看護学科
pp.31-36
発行日 2002年1月25日
Published Date 2002/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903125
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はじめに
2000年5月30日の朝日新聞で,アムステルダムに住むロバート・ネーダーコールン氏の妻,靖子さんが紹介された.甲状腺がんと診断された彼女は,3度の手術を受けた後,「意識がはっきりしているうちに死にたい」と1997年9月に安楽死を選んだというものだった.彼女の安楽死から4年後の2001年4月10日,オランダ上院は安楽死を合法化する法案を可決した.そして,そのニュースから3か月余り後,ネーダーコールン靖子さんの日記『美しいままで』(祥伝社)が出版された.この日記を通して,一人の人間として,また看護者として,死について多くのことを考えさせられた.中でも,最も関心をもったのは,彼女が日記の随所に「魂」という言葉を残していることだった.彼女にとって,「魂」とは,一体何だったのだろうか.
看護教育の場においても,看護実践の場においても「スピリチュアル」「魂」「霊的」などの用語を目にする機会が多くなった.そこで,オランダで安楽死を選んだ日本女性の「日記」を手掛かりとして,日本人にとっての「スピリチュアルケア」「魂のケア」とは,どのような概念をもつものなのかについて考えてみたい.
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