連載 ニュースウォーク・39
オランダの問いかけ—安楽死選択の土壌
白井 正夫
1
1元朝日新聞編集
pp.494-495
発行日 2001年6月10日
Published Date 2001/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902451
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江戸中期の説話集にある「高瀬舟流人の話」に題材を得て,森鶴外が「高瀬舟」を発表したのは1916年(大正5年)である。
小説の舞台は寛政時代。弟殺しで島送りになる男が,京都から大阪へ小さな高瀬舟で送られていく。見送り人もなく,舟でも1人月を仰ぐ姿を,護送役人の同心が不思議に思い,訳を尋ねる。2人の会話で罪の事情が明らかになる。不治の病を苦にして,のどを切って自殺を図ったが死にきれずにいた弟に頼まれて,男は死なせてやった。鴎外が同心に語らせる。「苦から救って運ろうと思って命を絶った。それが罪だろうか」。日本で初めて安楽死問題を扱った文学作品といわれている。
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