特集2 「安楽死」を考える
「安楽死」を考える—オランダでの安楽死法案可決を受けて
谷田 憲俊
1
1兵庫医科大学第4内科
pp.436-450
発行日 2001年5月1日
Published Date 2001/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906030
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第1章安楽死の定義と歴史
はじめに
1994年,オランダ.75年間にわたるキリスト教民主党支配から連立政党への政権交代が安楽死法制定への道を開いた.2000年11月28日,キリスト教民主党の強い反対にもかかわらず,「要請による安楽死と自殺幇助事例検討法(Review of cases of termination of life on requestand assistance with suicide)」,いわゆる「安楽死と自殺幇助法」がオランダの下院を通過した1).これは,それまでの「違法だが訴追せず」から「違法だが特例は免責」への変更,すなわち1993年の埋葬法修正による安楽死黙認から,明文法で表面的にも容認されるようになったことを意味する.93年の時点で黙認していたキリスト教民主党が明文化に反対したことからわかるように,安楽死容認の明文化自体にも意味がある.これは道徳律(個人)で規定していたことを倫理(社会制度)として認めることになるので,人間性に与える影響が大きいからだと思われる.これで30年間にわたる安楽死論議に終止符が打たれたとする見方もあるが,2002年成立と予測される本法案が上院でも議論になるのは必至である.いずれにしても,その過程を理解することが安楽死を考えることにもつながる.そこで,オランダの状況を中心に,今回の法案下院通過の意味を考えてみたい.
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