天地人
安楽死
地
pp.1689
発行日 1978年11月10日
Published Date 1978/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402208123
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8月のある夜,"カレンの裁判"というドキュメンタリードラマがテレビで放映された.植物状態に陥った娘の人工呼吸器を外してほしいという両親の訴えで裁判が行われ,安楽死をめぐっての論議が喚起された事件をドラマ化したものであった.何故,裁判してまでも争わねばならなかったのか,誰しも関心のあるところである.ドラマでは,両親は単に安楽死を望んだのではなく,回復の見込がまったくなくなった植物状態の娘を,特殊な人工装置で生命を維持させることを止め,神の手にゆだねてほしいという宗教的決心によるものであることを強調していた.
リーダースダイジェスト9月号にも,この親達が最近出版した"カレン・アン"の要約が掲載された.この本でもその主張は同じもので,自分達の信ずるカトリックの神父の教えに従ったとしている.それは「人間はあらゆる尋常な手段をもって生命を維持すべき道義的義務があるが,そのように生命を維持していくことが本当に耐えられないものであるとき初めて死ぬことが許される」というのである,人工呼吸器は回復の望みがまったくない患者には,もはや尋常な医療手段ではないとしている.
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