- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
実習目標を理解できないという課題
本誌を手に取られた先生方、実習指導者の皆さんが担当している学生は、実習目標をしっかり理解されているでしょうか。また、実習目標を意識して行動しているでしょうか。私が臨床の看護師として実習指導をしていた際、“ふむふむ、今回の実習の目標はこうなのね。そのためにはどんな患者さんを選定するとよいかな。どんな経験をできるとよいかな”と実習目標と対峙したことを覚えています。事前にこちらが目標に向かい合っていたから、ということもありますが、実習が始まった学生たちに目標を意識した指導をすると、学生たちが“あぁ、そんな目標もあったな”と思い出すような場面もありました。現在教員として、学生が実習初日に看護部長や病棟の看護師に挨拶をする際は、「どんな目的・目標をもって実習に来たのかを伝えましょう」と指導するのですが、そうすると「患者さんがどんな看護を必要としているのかを身体面だけでなく心理面や社会面からも考え、患者さんの尊厳を配慮しながらその患者さんに合った個別性のある看護をしたいです」など、実習目標にある言葉を拾いながら学生は上手に言葉にします。“えらい、その意気込みなら大丈夫!”と思うのですが、いざ実習を始めてみると、学生のなかにある目標は「看護の実際を知る」「看護過程を展開する」「急性期の看護を学ぶ」などと、途端にざっくりしたものになってしまうことも経験しました。
学生が実習目標を理解していないといけないのはなぜでしょうか。米国の心理学者である、エドウィン・ロックとカナダの心理学者ゲイリー・レイサムは、目標とモチベーションの関係について、目標設定理論を提唱しました。モチベーションをもち、維持するためには、①定量的で明確であること、②簡単に達成できるものより少しチャレンジングな目標であること、③チャレンジングではあるが達成するために複雑すぎないことの3点をふまえて目標を立てるとよいとしています1)。これらは目標設定する際の注意点となりますが、同時にこの理論では、目標を達成するには自身が設定された目標に納得しており、目標にコミットしていることが必要であるとも論じています。
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.