巻頭言
目標を立てることと結果を出すことの間
本田 秀夫
1
1信州大学医学部子どものこころの発達医学教室
pp.1415
発行日 2022年12月10日
Published Date 2022/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202683
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筆者は神経発達症(知的障害・発達障害)を主たる専門とする精神科医である.以前に約20年間にわたって横浜市総合リハビリテーションセンターに勤務し,耳学問ながらリハビリテーション科の先生方から多くのことを教えていただいた.それが,自分自身の神経発達症の臨床に大いに役立ったと感じている.
その一方で,精神医学的なリハビリテーションでは,身体的リハビリテーションに比べてより工夫の必要な領域があるとも感じている.なかでも難しいのが,目標に向かって訓練を積み上げていくという図式が成り立ちにくい領域だ.たとえば,意欲の向上や情緒の安定などがそれに当たる.身体医学においてもこれらは重要な要素だと思うが,精神医学ではこれら自体を取り扱うので,細心の注意が必要だ.学校の勉強に意欲が持てない子どもに対して「意欲の向上」を目標に掲げるとする.その目標に向かって本人が「意欲を伸ばす練習」を毎日一定のペースで行えば意欲が向上するのかというと,そんなことをやっても意欲はまったく向上しない.それどころか,一層意欲が低下してしまう可能性のほうが高い.
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