文学
古典と現代をさぐる「往還の記」
竹西 寛子
,
平山 城児
pp.106-107
発行日 1965年4月1日
Published Date 1965/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913572
- 有料閲覧
- 文献概要
女流作家は比較的おおいが,女性の文芸評論家は,きわめて少ない。社会評論家や時評家は,それでも何人か数をえることができるが文学プロパーの女流評論家は,現在という時点だけに限らなくても,全くみじめなほど少ない。文筆のわざの上でも,ことに理性を要求される評論というものに,女性が向いていなかったためであろうか。それが現われたのである。そうした珍しい存在を紹介するために今回は小説ではなくて,一冊の評論をとりあげることにした。
それは,竹西寛子の「往還の記」である。「往還」とは,「ゆきつもどりつ」という意味であろう。その題名がいみじくもいいあらわしているように,この評論は,日本文学の世界を,古典から現代へ,現代から古典へとごく気まぐれに往復しながら,文学それ自体が持っている,根本的な問題に迫ろうとこころみたものである。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.