特集 学生のセクシュアリティに向き合う
医療体制そのものに性の多様性をもたせよう!─意識改革より制度改革を
沼崎 一郎
1
1東北大学大学院文学研究科
pp.196-202
発行日 2017年3月25日
Published Date 2017/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200703
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はじめに
本稿の目的は,医療現場において多様なセクシュアリティを尊重する体制を整えるためには,医療従事者と医療施設の「多性化」という抜本的な制度改革が必要だと,看護教育に携わる方々に強く訴えることです。
医師の多数が「男性」であり,看護師の大多数が「女性」であり,病室や浴室,トイレが「男女別」のみという医療現場の現状を放置したままで,どんなに医療従事者の意識改革を求めても,多様なセクシュアリティの尊重が実現することはありえません。それはなぜかを明らかにすることが,本稿の第一の課題です。そのために,まずセクシュアリティとは何かを簡単に復習し,次いでセクシュアリティが無視されているがゆえに生じている現場の問題点を指摘し,それらの問題は「意識改革」で対処できるものではないことを論じたいと思います。
そのうえで,セクシュアリティの尊重が可能となる医療体制とはどのようなものか,一緒に想像していただきたいと思います。目指すべき理想を描くことが,本稿の第二の課題です。夢物語だと思われるかもしれませんが,お付き合いください。
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