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はじめに
2012年答申『新たな未来を築くための学士課程教育の質的転換に向けて』では,予測困難な時代に立ち向かい,時代を生き抜く力を学生が確実に身に付けるための大学教育改革が,学生の人生と日本の未来を確固たるものにするための根幹であり,そのために,学士課程教育の質的転換を進めることが不可欠であるとの認識が提示された。答申に先立つ『審議のまとめ』では,「生涯学び続け,主体的に考える力」を意味する主体的な学修は,十分な学修時間を通じて醸成されると認識されている。すなわち,学生の主体的な学びを確立させるための始点が,十分な学修時間の確保であり,そのために,学士課程教育課程の改善の責任が大学にあることを明確にしたのも新しい点であった。
「主体的な学び」とは,「学生が目的意識をもって,受け身ではなく,学びに主体的にかかわり,何らかの学習成果につなげること」と定義する。学びに主体的にかかわるという態度は,大教室で行われる教員の講義主体の授業を通じても,学生が目的意識をもって学ぶ場合には,醸成することもできるであろうし,かつ成果につなげることは可能である。しかし,近年では,多くの大学の授業において,従来の教員の側から提供する講義主体のティーチングに加えて,学生が能動的にかかわるアクティブ・ラーニングが導入されるなど,教育方法に関する研究の蓄積がなされ,その蓄積の結果から,学生の主体的な学びを促進する方法としてのアクティブ・ラーニングが改めて注目されるようになってきた。
このアクティブ・ラーニングには,学生同士が学び合うというピア・ラーニングの要素が含まれる。そのためもあり,ピア・ラーニングを促進する環境として近年多くの大学が「ラーニング・コモンズ(以下,LC)」を設置するようになってきている。本稿では,ピア・ラーニングを支える環境である「ラーニング・コモンズ」を材料に,環境の効果について考察する。
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