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授業はなぜ“設計”しなくてはならないのか
授業を設計(design)する,とは何を指していうのだろうか。「設計」あるいは「デザイン」という言葉をことさら用いなくても,教員は日常の授業案を考え,授業を営んでいる。授業の目指す目標を考え,使えそうなケースを探し,起承転結を構成し,準備物を整えて授業に臨む。具体化の程度の差こそあれ,授業の計画をあらかじめ頭に描いて教壇に立っている。そもそも人と人とがぶつかりあう授業に対して,設計(デザイン)という言葉を使わなくても「計画」でも「構成」でもよいのではないか? 授業は「生き物」だから,あらかじめ詳細に「設計」などできるはずがないのでは? 細かく計画を立てれば立てるほどダイナミックな授業進行が難しくなり,型にはまった薄っぺらな授業になってしまう危険性すらあるのでは? 大筋で計画してきたことを授業でぶつけて,顔を見ながらその場で臨機応変に変更しながら授業を構成していく力が大切なのでは?
授業設計に真剣に向き合わない理由はいくらでも考えられるが,一方で,授業はしっかり設計しておいたほうがよい,と考えられる理由もたくさんある。その第一は,知る価値がある知恵がたくさん存在することだ。それを知ることによって,「自分が教わった方法」で教えるよりも,授業がもっとよくなる可能性がある。自分の経験だけに頼っているよりは,これまでの実践や研究で積み重ねられてきた英知を短時間で身に付けることができる。そのため,早くベテランの域に近づける。また,よい授業を実現するためのヒントが満載なので,「これもやりたい,あれもやってみたい」と思えて教える準備をすることが楽しくなる。さらに,実際に楽しい授業ができるので,学生にも喜ばれるようになる。
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