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お悩み 大学院修士課程の学生で,教員が予想しないところで研究を進めることができない学生に出会うことがある。教員は,予定の2年間で修了することを目指し,試行錯誤しながら関わるがうまくいかない。みなさんには,そんな経験はないだろうか。ここでは,そんな学生の一人Aさんに登場してもらうことにする。なおAさんは,複数の学生の状況を反映した人物である。
Aさんは,順調に研究計画ができ研究倫理委員会の承認も得られ,研究を実施する段階になったが,研究を進めることができないでいた。教員が研究を進めるよう促すと,始めは「やります」と明るい返答であったが,徐々にそのトーンも変わっていった。「できる気がしない」と言うようになり,数か月後には,「研究をする意味がわからなくなった。私には,研究は無理です」などと話す。この間,具体的にスケジュールを確認するなどしたが,研究には着手できないまま時間が過ぎ,徐々に大学に来ることが少なくなっていった。
Aさんは,研究以外のことはいつも通りできていると話し,その様子も楽しそうであった。教員は,Aさんが研究から逃げている印象をもち,Aさんが自分自身と向き合う必要があると考え,大学院卒業後のことなど,今後どうしていきたいか考えるように促した。また,その答えが出るまで,研究については考えないこととし,このための時間は1か月とした。
1か月後,Aさんは,幾分すっきりした表情で研究室を訪れ,「このまま就職しても中途半端なので,やはり卒業したいと思います。だから研究をしてみます」と言い,研究を再開することができた。
Aさんのように研究に躓く学生は少なからずいるが,学生が何に困難を感じているのかを理解するのは簡単ではない。どのように支援していくのがよいのだろうか。
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