特別記事
介護の社会化は進んだか
杉原 陽子
1
1東京都老人総合研究所
pp.1106-1110
発行日 2006年12月1日
Published Date 2006/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100760
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「介護の社会化」「在宅重視」「サービスの自由な選択」等の理念を掲げて2000年4月に介護保険制度が施行され,6年半が経過した。この間,在宅サービスの利用量や利用者数,サービス事業者数は全国的に拡大したが,その一方で介護保険給付費は予想以上に増加し,介護保険財政は厳しい状況に置かれている。介護保険制度は,当初より「制度施行後5年を目処として制度の見直しを行なう」ことが介護保険法(付則)に明記されていた。そこで制度改正に向けて現行制度の問題点,特に年々膨らむ給付費の抑制についての検討が行なわれ,2005年7月に改正介護保険法が成立した。
今回の制度改正の基本的な視点は,第一に,軽度者(要支援・要介護1)の大幅な増加を抑制するため介護予防を推進して「明るく活力ある超高齢社会の構築」を目指すこと,第二に,給付の効率化・重点化を図って「制度の持続可能性」を高めること,第三に,年金,医療などの他制度との役割分担を明確にして「社会保障の総合化」を図ることである。これらの基本方針は,介護保険給付を抑制するというねらいを色濃く反映したものとなっている。このように,介護サービス体制の拡充から給付の抑制へと政府の方針がシフトしていく中で,制度施行当初,政府によって盛んに謳われていた「介護の社会化」という言葉は,今回の制度改正の議論の中で,ほとんど聞かれなくなっている。
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