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はじめに─ジョイント演習の意図
看護基礎教育において,学生は看護記録についてその意義や方法について学んでいる。しかし,臨床実習においてはさまざまな制約から学生は看護記録を書いていない現状にあり,受け持ち患者の記録は実習記録の一部として記載している。これは,問題解決思考の一環として看護の思考過程を育成する目的である。
臨床における看護記録は,看護実践の根拠,看護を実施したことの証明,情報交換ツール,公的文書としての役割,また医療事故防止の視点から書かれている。当然,看護師の思考は反映されるが,学生が実習記録として求められる根拠や一つひとつの思考の筋道,患者の詳細な言動は必要ない。しかし,看護師の観察や判断,今後の看護の方針は明確に記していることが求められる。
学生は就職後間もなく看護記録を書くことが求められる。卒業生からは「看護記録が書けない」とう発言も耳にする。当校の現在の看護学実習では,上記の記録の記載状況に加え,電子カルテや個人情報保護の観点からカルテの閲覧にも制限が加わり,看護師の看護記録にふれる機会も少ない。しかし,学生は卒後の看護記録記載に関する不安は他の技術に比べ大きくはない。就職するにあたり不安なことは職場の人間関係や注射といった技術に集中している。記録に関しては,学生も実習中に「新人は記録が書けない」といった言葉を聞いてはいるものの,問題点やその取り組みを知ろうという行動はない。このような状況のなか,就職後の記録に関する指導は施設によって違いが見られ,院内教育に統一されたプログラムについては発表されていない現状にある。
看護基礎教育における看護記録の教育体系について,岩井1)も,「看護学生に『看護記録』というタイトルでコマ数を設けて教育しているところはほとんどないと思います。(中略)実習中の『実習ノート』の記録と,臨床の場での『看護記録』が混同されて教育されているのです」と教育現場における問題点を指摘している。しかし,新人看護師や卒業前の学生の教育についての先行研究は少ない。そこで,卒業後の臨床への適応を支援することを目的に実習記録を看護記録へつなげるジョイント教育に取り組んだので報告する。なお,本稿における学生のアンケートおよび実際の記録については学生の承諾を得たものである。
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