特集 看護の学びを問い直す 専門職の成長を促すものは何か
看護教育において「基礎」とは何か
山口 榮一
1
1多摩川大学教育学部
pp.563-569
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100316
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はじめに
私たちは意識することなく「基礎」という言葉を用いる。そのイメージが「教科の基礎とは何か」の期待を形成し,基礎看護学という教科を成立させ,基礎実習という言葉を生み出す。看護教育には,「基礎看護学」という教科がある。この授業を担当している教師が嘆いた。「基礎で教えておいてくれないと困る」と言われて,困惑することが多いと。また,基礎実習に関する研究に加わったとき,ふと思った。どうして看護ではわざわざ「基礎実習」というのか,と。
新しい学力観は,「数学基礎」という科目を新設した。これは,数学が苦手な生徒が数学に親しめるよう,なるべく数学を楽しめるようにしたいという科目のようだ。看護「基礎」実習は,こうした科目ではないだろう。一方で,「臨床医になれば目の前の患者を救える,一方,基礎医学で成果を上げれば,世界中で,何千何万もの命を一度に救うことができる」という言明もある。
ここで言う「基礎」は,基礎看護学,看護基礎実習あるいは,基礎看護技術の「基礎」と同じ意味であるのか。「看護教育において基礎とは何か」という問題は,カリキュラムの問題である以前に,「基礎」という言葉のイメージにまつわる問題であることを指摘したい。
本稿では,教育をめぐる「基礎」という言葉をめぐるイメージ(モデル)と,そのつまずきを学習支援という視点から検討し,基礎教育とは看護領域に参加した「初心者の教育」であると主張したい。
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