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日本看護学教育学会第16回学術集会が8月5・6日に名古屋国際会議場で行われる。メインテーマは「学習力を育む―看護教育と創造性」である。本稿は,学会に先立ち,これを企画した高橋照子学会長が,教育講演講師である佐伯胖氏に看護教育になにが大切なのか,教育者の立場からの発言を求めてインタビューしたものである。
技術は現場で覚えていく
高橋 いま,新人ナースが臨床で続かなくてやめていくなど,現場とのギャップの問題が浮上しています。先生は,何が問題だと思われますか?
佐伯 私はあるとき,新人ナースたちがどういうふうに育つかというドキュメンタリー番組を観て思ったことがあります。
それはもう,涙の感動物語でした。新人が入ってくると,プリセプターのナースが「あの人はこんなこともできない」と本気で悩む。それを,必死になってとにかく頑張って,辞めたくなっても歯を食いしばって努力する。そして,何かをきっかけに実力が認められて,仲間に入れてもらい,よかった,よかったという番組だったんです。
初めから難しい課題を与えて「できない」「できない」と責めるのは,学習や教育というものの考え方がスキルと知識を身につけさせることで,それができればうまくいくという考え方だからなんですね。番組を見てつくづく思ったのは,現場の中で実践知を学ぶということはどういうことか全然考慮されていないということでした。
新人がなぜやめていくのかという問いに対して,一番,そして妙にわかりやすい診断は,「知識・技能がないからだ」というものですよね。それで,「じゃあ,知識・技能を身につけましょう」と,知識・技能を徹底することで解決しようということになるわけです。それを,「いや,そういう話じゃないんだ」ときちんと言っていくことは大変なことです。
教育界において,教育工学的学習論がどういう弊害をもち,どういう問題をもたらし,そこをどういう新しい学習論,新しい学習観で克服してきたかということが看護教育界には伝わっていないんだなと思いました。
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