1200字通信・28
風のにおい,雨のにおい
板野 聡
1
1寺田病院外科
pp.925
発行日 2011年7月20日
Published Date 2011/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103631
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- 文献概要
病院での生活では,朝,建物に入るとそのままで,帰る頃には夜になっていることが多く,季節感に乏しい生活になりかねません.そこで,医局に戻ったときには窓を開けて外の空気を大きく吸い込み,それぞれの季節を味わうようにしています.春は芽吹く木々の香りを,また夏は焦げるような熱気を感じることになりますし,秋は枯れてゆく落ち葉の匂いに少しセンチな気分を味わえます.寒い冬は冬で,凛とした冷気を吸い込み,身体が引き締まる思いを楽しんでいます.
歳を取ってきてよいことのひとつ(と自分で考えていること)に,こうした季節ごとの,あるいは朝と夕での気温や湿度の違いに敏感になってくることがありますが,若い頃にはなかったように思えてなりません.この感覚は,人生という経験を積むことで得られるものなのか,はたまた人生の残り時間が減っていく分だけ感覚が研ぎ澄まされていくためなのか,その理由はわからないでいますが,自分としては歳を取る代償としては,まずまず納得できることの一つではあります.
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