特集 保健婦活動研究論文集
地域看護領域における調査研究のポイント—実態調査から実証研究へ
河口 てる子
1
1日本赤十字看護大学
pp.184-189
発行日 1996年3月10日
Published Date 1996/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901328
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地域看護学における調査研究への期待
地域看護学・公衆衛生看護学の領域では,他の領域に比較して研究,特に調査研究の数が多く,地域看護に関わる研究者・実践家の方々の意気込みが伝わってきます。しかも,地域看護の領域は現在,高齢社会に向けて世間一般の人々からも大きな期待をかけられています。現場の専門家の意気込みと一般の人の関心の高さは,看護が実践でも学問でもアピールできる絶好の状況です。また,この状況は同時に他の学問分野・領域の人々にもアピールできる時だと思われます。このような時は,過去にも未来にもそうあることではなく,ひょっとしたら二度とないかもしれません。そういう意味からも地域看護学が,実践においても学問領域としても認知されるに必要な条件,すなわち研究の充実と蓄積から導き出される学問体系の形成という面から,調査研究を考えてみたいと思います。
学問としての地域看護学の成熟は,優秀な研究の蓄積次第であり,特に地域・公衆衛生看護学に多い調査研究のでき次第といって過言でないと思われます。現在この領域の論文を分類すると,調査の中でも実態調査に相当するものが大部分であると思われます。以前から地域把握のために行われてきた実態調査は,これからも十分重要ではありますが,これからは学問としての知識体系の発展という意味からも,実態調査を積み重ね,応用した実証研究が多数でることを期待したいと思います。つまり,単に実態調査だけで終わらせずに,それらを積み重ね,仮説を提示し,概念間の関係から理論へと向かう研究を進めることが地域看護学の学問的な発展に大きく寄与すると考えます。
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