特集 地域から取り組むリプロダクティブ・ヘルス―新しい出産像を求めて
紀南地域における出産の実態調査
山下 成人
1,2
1三重県紀南県民局保健福祉部
2熊野保健所
pp.179-183
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100820
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紀南管内は紀伊半島南端近くに位置する過疎地域であり,少子高齢化が進んでいる.僻地ということで,従来から医師確保に苦慮してきたが,特に近年,産婦人科医,小児科医の確保が問題となっている.平成12年度,出産は年間344,大半は地域に唯一の拠点病院での出産である.拠点病院のスタッフは産婦人科医師2名,小児科医師1名,助産師6名である.また,母子医療センターのような3次救急病院が救急車で3時間かかる僻地である.ここ5年(平成8~12年度)の母子保健指標は,平成11年の日本の平均と比べ乳児死亡率1.73倍(新生児死亡率1.78倍)であり,平成13年2月現在,療育手帳A(最重度,重度)交付児は18歳未満人口の0.56%で,三重県の2.7倍である.地域の母子保健医療環境の維持・改善のためには,現状を把握して,医師・助産師等スタッフの確保,その上での質の向上,環境整備などの対策が求められている.
平成13年度,紀南地域の健康実態調査として,出産体験が育児における母子関係の確立・メンタルヘルスに重要な影響を与えるという仮説のもと,出産後2年以内の母親に最近の出産・授乳状況に関してインタビュー調査を行い,出産体験の現状を把握することにした.調査結果をもとに,出生数が少ないという地域の特性を生かし,全出生に対して,継続的にケアできる母子保健・医療・福祉体制を構築することを県・市町村,拠点病院,大学等からなる「紀南母子保健医療推進協議会」で決定し,取り組んでいる.
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